振り込め詐欺「出し子」に堕ちた19歳を救え〈後編〉
もう戻る必要はない。自首をした少年は。
■その後の顛末
その後の顛末を話そう。紆余曲折はあったが、結局新之助は自首をしてくれた。逮捕約1ヵ月後に少年鑑別所におくられた。
私は約束をしていたので、一度鑑別所に面会に行った。
面会室で一人待っていると、鑑別所職員に連れられて新之助が入ってきた。
茶色に染めた髪の毛は真っ黒になっており、あごひげもきれいにそり落としていた。足取りもしっかりとしている。
「神里さん、今回はほんとうにありがとうございました。出たら鳶か大工をして真面目に働くつもりです」と凛とした佇まいで真剣な顔つきだった。
「お前の真面目になるは、あてにならないからな」私は少し意地悪なことを言って笑った。
「そんなことないっすよ」新之助ははにかみながら言った。
もう大丈夫だな。私はそう思い鑑別所をあとにした。
※氏名は仮名です。少年のプライバシーを尊重し、個人が特定されないように配慮しています。